第56話:機関車に揺られて

テオ「なっ!」
テオ「あっ!」
テオ「おぉ~っ!?」
ユウ「テオ、あんまり景色を追いかけてると首が痛くなるぞ、というか俺は痛めたぞ。」
テオ「だ、だって!景色があっという間……、」
テオ「にっ!?」
テオ「がっ!」
テオ「おぉっ!?」
ユウ「うん、大丈夫だぞ。伝わってる。」
メルク「テオが嬉しそうで、私たちも嬉しいのですよ。」
ヘキサルト「本当にいい景色だよね……。ピラオロス達にも見せてあげたかった。」
トト「きゅきゅきゅきゅ……。」
ユウ「まぁ、ルールだしな……。」


タイロス「悪いけど、この身長か体重を越えるモンスターは乗車禁止なんで。床とか座席とか、ぶっ壊れるし。」
ピラオロス「ぽぉ!?」
ヘスペラ「うぉる!?」
エルピス「へ、ヘスペラァー!」
トト「きゅきゅきゅきゅー!」
ヘスペラ「うぉ、うぉるるるー!」
ヘキサルト「ピラオロスー!」
ピラオロス「……ぽぉ。」
ヘキサルト「いや諦め早いな君はー!」


エルピス「ヘスペラ……。」
ヘキサルト「降りたらすぐに呼ぼうね、後輩!」
エルピス「うん、先輩!速攻呼ぼう!フライング気味に呼ぼう!」
ヘキサルト「フライングはダメ!」
エルピス「ダメか!」
カプナート「おい。」
ヘキサルト、ユウ、メルク「きゅっ……!」
メルク(し、自然体に!自然体になのですよ!)
ユウ(あ、ああ!わかってる!)
ユウ「う、うるさかったで、ございましょうか……?」
メルク(明らかに人工的な態度なのですよー!)
ユウ(意識すると難しいんだよー!)
カプナート「……どうでもいい。」
ユウ「そ、そうですか……。」
カプナート「報告だ。商業都市への到着は夜になる。」
カプナート「着いたらすぐに宿に移動する。その時は騒がず、迅速についてくることを期待する。」
ヘキサルト、ユウ、テオ(めちゃくちゃ気にしてる……)
ヘキサルト「お、おっけぇい!任せて!」
ユウ(すげぇ!行った!)
テオ(度胸の人だわ!)
カプナート「その顔で笑うな……。」
テオ(玉砕だわ!)
メルク(相性最悪なのですよ!)
ヘキサルト「あ、そ、そうだった。ごめん……。この笑顔は嫌いだったよね、リーダー。」
ヘキサルト「じゃあ、ちょっと待って!別の考えてみる!」
ユウ、テオ(メンタルが強すぎる!)
ヘキサルト(口は大きく開けず、わずかに開く感じ!目はうっすらと微笑むことで上品さを演出!極めつけは、声を上げない笑い方!)
ヘキサルト(ふっ……。)
カプナート「……。」
ヘキサルト「ぎゃあー!に、睨まないでー!」
メルク「今のは完全にヘキサルトさん側の落ち度なのですよー!反省しているから許してあげてほしいのです!」
ヘキサルト「うん!今度はもっとうまくやるからー!」
メルク「そういうことじゃないのですよー!?」
カプナート「……余計なことをするな。」
ヘキサルト「う、うす……。」
ヘキサルト(はぁ……失敗した)
エルピス(ナイスガッツ)
ユウ(う、うん。ガッツは良かったな。ガッツだけは、本当に……)
ヘキサルト(うう……難しいよ、リーダー好みの女)
ユウ(言いかたには気をつけような?)
メルク(無理して合わせることはないのです。メアリローサさんも言っていたのですよ?)
ヘキサルト(う、うん。それはそうなんだけどさ)
ヘキサルト(せっかく仲間になれたんだもん。できれば、仲良くしたいと思って……)
ユウ(それは俺たちも同じ気持ちだけど……)
ヘキサルト(けどほら、私は素が嫌われてるから、多少は向こうに合わせたほうがいいのかなって……)
ヘキサルト(薄っぺらい笑顔って、言われちゃってるしね。あははは……)
エルピス(先輩……)
ユウ(とはいえ素の自分なんて、そう簡単にも変えられる物でもないしな……)
メルク(でもでも、カプナートさんと仲良くしようと思ったらどうしても自然でいられなくなるのですよ……)
ヘキサルト、ユウ、テオ(うぅーん……)
タイロス「ハッロー!エブリバデ!乗り心地はどうだーい!わはははははー!」
トロボック「うっす、うーっす!」
ヘキサルト、ユウ、テオ「この人すっげぇ……。」
カプナート「タイロス……?お前、運転はどうしたんだ?」
タイロス「そりゃあ、優秀な助手にお任せよ!」


トロボック「うっす、うっす!」
トロボック「うすうす、うぃーっす!」
トロボック「うい。」


タイロス「こいつらは複雑な作業はできねぇが、作業の分担は得意でな。ちゃんと教えてれば、きっちりこなしてくれる。」
トロボック「うっす!」
メルク「みゅ~、それはすごいのですよ!」
タイロス「まぁ、うちのトロボックはまだまだだけどな!セイヴァリ号のトロボックはすごいぜー!」
テオ「セイヴァリ号って、もう一台あった大きいヤツ?」
タイロス「おう!機関車の代名詞だな。二番目に作られた機関車で、馬力は最大級!大量の客を運ぶにはもってこいの機関車だ!」
タイロス「で、今乗ってるのが三番目に作られたユコメン号。今回みたいな要人輸送や、設計議会の任務に使われる。特別車両ってヤツだ。」
ユウ「見た目はそう変わらないように見えたけど……。」
タイロス「まぁな。性能自体は二台ともそう変わらねぇ。大きく違うのはさっき言った通り、用途だ。」
タイロス「セイヴァリ号は決まったスケジュール通りに走るが、ユコメン号にはスケジュールはねぇ。乗客の望みのまま、お好きな時間にどうぞってな。」
タイロス「まさに、今回みたいな件にうってつけなわけだ。」
メルク「なるほどなのですよ!いつでも移動できる手段があるというのは、確かに助かるのです~。」
エルピス「ありがとう、ユコメン号。」
タイロス「動かしてるのはオレっちね?惚れてくれてもいいよ?」
トロボック「うーっす!」
タイロス「いってぇ!」
カプナート「……で、そのことをわざわざ言いに来たのか。」
タイロス「いやいや、ついでだよ。ジジィに毎回やれって言われてるんでね。オレっちの本命は……、」
タイロス「機関車名物!車内販売だぁ!」
トロボック「うーっす!」
ヘキサルト「車内販売!?セイヴァリ号だけのイベントかと思ってた!わはぁ、やったあ!やってみたかったんだよね!」
ユウ「車内販売って……?」
ヘキサルト「ええっとね!私も話で聞いたことしかないんだけど……、って、これは見てもらった方が早いかも!」
トロボック「うーっす!」
ユウ「カートに食べ物がいっぱい乗ってる?」
タイロス「食べ物だけじゃねぇぞ、少年!新聞、書籍、文房具に限定ペナントも!」
エルピス「あれっ!?」
タイロス「要は雑貨店、機関車支店ってとこよ!機関車内でお買い物ができちまうんだぜー!」
エルピス「おお、それは……!」
エルピス「……外で買うのとは違うの?」
カプナート「……違うだろう。」
エルピス「えっ。」
カプナート「いや……。」
ヘキサルト「機関車で食べるお弁当はこれまたおいしい!……らしくてさ!えへへ、実は私も初体験!」
ヘキサルト「というわけで、お弁当くっださーい!」
タイロス「よし来た!今日の弁当ラインナップは、こちらぁ!」
トロボック「うーす、うすうす!うっすうっす!うっすっす!うすすすす、うっす!うっす!」
タイロス「以上だ!」
ヘキサルト「お、おぉ……。」
エルピス「じゃあ私はうっすっすを……!」
ヘキサルト「チャレンジャーだな!?」
テオ「あっ、あたしこれ食べたい!ハニーチキンサンドイッチ!」
タイロス「はいよ、400ゴルドな!」
テオ「あ、お金取るのね……。」
タイロス「販売ですから。あとこれ、オレっちのお小遣いになるの。」
トロボック「うっす。」
ユウ「ものすごいあからさまに言いますね……。」
タイロス「うん。」
ユウ「ま、まぁいいや。じゃあ俺は、このチュ、……チュロス?」
カプナート「……!」
ユウ「揚げパン、ですかね?」
タイロス「みたいなもんだな。甘くてうまいんだぜー。ほい150ゴルド。」
ユウ「ありがとうございます。トト、食べてみるか?」
トト「きゅうー!」
ヘキサルト「じゃあ、私はねー……。」
「……ごくん。」
ヘキサルト「うん?」
カプナート「……。」
ヘキサルト「……。」
ヘキサルト「リーダー、なに食べる?」
カプナート「なっ……。」
カプナート「……僕はいらない。お腹も減ってない。」
ヘキサルト「そっか……?」
ヘキサルト「じゃあ、私もチュロス!5本!」
タイロス「食べるなオイ!太るぞ!」
タイロス「ふっ、けどいっぱい食べる子は好きだぜ。オレっちと結婚したら、毎日大量のチュロスを……、」
ヘキサルト「あはははは!」
タイロス「なんの笑いなの?」
ヘキサルト「はむ!むむむ、これは美味しい!外はサクサクだけど、中はもっちりだ!」
メルク「みゅわわ!ユウさん、砂糖が落っこちてきてるのですよ!」
ユウ「うわっ、すまん!けど、この落っこちるぐらいついている砂糖がまたよくてさ……。」
カプナート「……。」
メルク「私は全然良くないのですよ……。」
エルピス「でも、砂糖でキラキラして綺麗だよ。」
テオ「うん、オシャレ!」
メルク「みゅ、そうなのです?みゅふふ~、それならまぁ無しでは……。」
メルク「いや無しなのですよ!食べこぼしなのですよー!」
ユウ「ごめんて。」
カプナート「……。」
ユウ「……。」
ヘキサルト(ユウ、ユウ)
ユウ(うん、どうした?)
ヘキサルト(チュロス、一本あげる)
ユウ(えっ、なんでまた)
トト「きゅ!きゅきゅー!」
ユウ「わっ、こら!お前の分じゃないって!」
ユウ(……もしかして、俺からカプナートに?)
ヘキサルト(気づいてたか……。リーダー、私からじゃ受け取らないと思うからさ。ユウの方から渡してあげてよ)
ヘキサルト(それにユウは何か、気づいてることがあるんでしょ?)
ユウ(気づいてるっていうか、気になるってぐらいだけど……)
ヘキサルト(なら確かめてきてよ。きっと、ユウなら態度も変わってくるはずだから)
ユウ(えぇ、そうかな……?)
ヘキサルト(そうだよ。だってユウは、男の子だからねん)
ユウ「……?」
トト「きゅう!きゅう!」
ヘキサルト「よしよし、トト!私のをあげよう!おいでー。」
トト「きゅきゅー!」
ヘキサルト(これぐらいしかできなくて、ごめんね?)
ユウ「……。」
ユウ「エルピス。メルクのこと持っててくれ。」
エルピス「ん、わかった。」
メルク「よろしくなのですー。エルピスが買ったのは、なんなのです?」
エルピス「こう……やたらと堅い茶色いもの。」
メルク「……おいしいのです?」
エルピス「じゅーしぃー。」
カプナート「……。」
ユウ「あの……カプナート、さん?」
カプナート「無理して、さん付けしなくていい。なんだ。」
ユウ「あ、えっと……。チュロス、一本食べてくれないか?お腹いっぱいで……、」
カプナート「……。」
ユウ「あっ、口はつけてないぞ!新品!ん、新品って言い方であってるのか……?」
カプナート「お前は一本しか買ってないだろ。」
ユウ「ギクッ!よ、よく見てるな……。」
カプナート「たまたま耳に入っただけだ。5本買っていた、ヘキサルトの差し金だな。」
ユウ「は、はい……。」
カプナート「……嘘のつけない男なんだな、お前は。」
ユウ「よく言われる……。ごめん、お邪魔しました……。」
カプナート「ああ……。」
カプナート「……いや待て、こっちに座れ。」
ユウ「へっ?」
カプナート「座れ。」
ユウ「は、はぁ。失礼します。」
ユウ、カプナート「……。」
ユウ「あー……。」
ユウ「チュロス、食べるか?おいしかったぞ。」
カプナート「いらない。」
ユウ「あ、はい……。」
カプナート「……。」
カプナート「おいしいのは、知ってる。」
ユウ「え?」
ユウ「あっ、そ、そうなのか!機械の国ではポピュラーな食べ物なのか?」
カプナート「そのイメージはない。ただ、機関車に乗ると祖父が必ず買ってくれた。」
ユウ「へぇ、おじいさんが……。」
カプナート「……。」
ユウ「うん、顔に何かついてるか?」
カプナート「……砂糖。」
ユウ「うわっ!?ご、ごめん!見苦しいものを……!」
カプナート「……。」
ユウ「ええっと……じゃあ嫌いではないんだよな?」
カプナート「……そうだな。だが今はいらない。甘いものを食べると気が抜ける。」
カプナート「僕は、そんなものを食べていい状況じゃないんだ。」
ユウ「……。」
カプナート「お前もほどほどにしておけよ。切り裂き魔との戦闘になったら、僕とお前の二人で戦うことになるんだからな。」
ユウ「そうだな……。」
ユウ「って、えぇええええ!?」
メルク「みゅ?」
ヘキサルト「何事じゃ。」
ユウ「わ、悪い。何でもない……。」
ユウ「な、なんで二人だけで!?」
カプナート「何を騒いでいる。このメンバーなら当然だろうが。」
ユウ「いやいや!ヘキサルトとかエルピスとか、下手したらテオの方が俺より強いぞ!?」
カプナート「だが、女性だ。」
カプナート「戦いで傷つくのは男の仕事、女性を守るのが男の使命だ。常識だろう。」
ユウ「そういえば、初めて会った時も……、」
カプナート「……お前はエルピスに守られていたな。情けない限りだ。」
ユウ「うっ……。」
カプナート「……。」
カプナート「お前の国では、それが普通なのか?」
ユウ「普通というか……。けど、戦う人の性別に関しては、そこまで重要視されてないかな。」
ユウ「騎士っていう機械の国でいう警吏にも、女の人はいたし……。」
カプナート「……理解できん。」
ユウ「カプナートにしてみたら、そうかもな。機械の国ではどうしてそうなってるんだ?」
カプナート「どうして?」
ユウ「えっ、もしかして理由はないのか?」
カプナート「そ、そんなことはない。父も祖父もそうしてきたと聞いている。」
カプナート「つまりこれは伝統だ。それを受け継いだ者は、形を変えずに守る義務がある。どうして、と言うならこれが答えだ。」
ユウ「伝統か……。」
ユウ「色々、背負うべきものがあるんだな、カプナートには。」
カプナート「……?」
ユウ「伝統とか、使命とか、期待とかさ。俺と歳もほとんど変わらないのに、すごいよ。」
カプナート「……そんなことはない。祖父や父なら、もっとうまくやっていた。」
カプナート「僕は……まるでダメだ。」
ユウ「……。なあカプナート、こういう言葉って、機械の国にもあったりするか?」
ユウ「『偉大な自分を夢見なさい。愚かな過去は省みなさい。そして、今の自分を誇ってやりなさい』」
カプナート「お前の国の格言か?」
ユウ「いや、魔法の国の格言だ。」
ユウ「俺もまだ、練習中だけど……。たとえ未熟者であってもさ、頑張ってる自分は、褒めてやってもいいんだって。」
カプナート「……。」
ユウ「俺から見たらカプナートは、その……、すごく頑張ってると思うよ。」
カプナート「……。」
カプナート「知ったような口を利くなよ。」
ユウ「で、ですよね。すみません……。」
カプナート「……だが、受け取ってはおく。」
ユウ「そっか。」
カプナート「……話し過ぎた。もういいぞ。引き留めて悪かったな。」
ユウ「いや、俺も話せてよかったよ。なんというか……また話してくれると嬉しい。」
カプナート「……気が向いたらな。」
ユウ「ああ、ありがとう。」
カプナート「……今の自分を誇って、か。」
カプナート「……。」
カプナート「ふん……。」


「産業都市ー、産業都市ー。お降りの際は、忘れ物にご注意をー。」
タイロス「ってね。お前らはどうせまた乗るし、忘れてもいいぞー。」
テオ「はーい。」
エルピス「おまたせ、ヘスペラ。一緒に歩こう。」
ヘキサルト「ピラオロスも、おいでー。」
ヘキサルト「うぉるる。」
エルピス「わほっ。すりすり……。うん、私もあえて嬉しいよ。」
ヘキサルト「ほほーう。」
ヘキサルト「さぁおいで、ピラオロス!私達も寂しさを埋めるすりすりをしよー!」
ピラオロス「ぽ。」
ヘキサルト「そっぽむかないでよ。」
カプナート「明日の昼頃、連絡係で誰かを寄こす。」
タイロス「へーい、了解。」
カプナート「みっともない真似はするなよ。」
タイロス「みっともないとは何さ……。」
メルク「みゅ?タイロスさんは、一緒に来ないのです?」
タイロス「やだメルクちゃん!オレっちがいないと寂しい?」
メルク「単純な疑問なのですよ~。」
タイロス「つめたぁい。」
タイロス「オレっち達は機関車の中の方が、よく眠れるんでね。明日の準備もしなきゃなんねぇし。」
タイロス「それにオレっちの仕事は、機関車動かすだけだからなぁ。荒事に巻き込まれるのはまっぴらだぜ。」
エルピス、テオ「つめたぁい。」
ヘキサルト「適材適所、適材適所!タイロスさんが怪我したら、誰が機関車を動かすのさっ!」
タイロス「そういうこと!わかってるねー、ヘキサルトちゃん!付き合おっ!」
ヘキサルト「タイロスさんにはもっと良い人いますよ!」
タイロス「やだ、断るときの常套句!」
カプナート「私語は慎め。移動するぞ。」
ヘキサルト「っと、ごめーん!じゃあねタイロスさん、トロボック!おやすみなさーい!」
メルク「なのですよー!」
トロボック「うっすうっすー!」
タイロス「おーう、いい夢をなー!」
タイロス「……さてと、それじゃあオレっちたちは!」
トロボック「うっす!」
タイロス「夜の街に繰り出すとするかなっ!」
トロボック「うぃー……。」


テオ「それにしても……ぷあ。霧が濃いね。」
ヘキサルト「元々、霧は多い街なんだけどね。今日はまた特別濃いなー。」
エルピス「先輩、この街のこと知ってるの?」
ヘキサルト「うん、昔この街で働いてた時期があるから。」
カプナート「勝手に動いてはぐれたりするなよ。」
ヘキサルト「あ!じゃあ手をつなぐのはどう?リーダーは私とねー。」
カプナート「なっ……!?触れるなっ!」
ヘキサルト「うわっと!ご、ごめん!」
カプナート「な、何を考えているんだお前は!僕の手を握るだと……!?」
ヘキサルト「い、いや、ほんとごめん……。調子に乗りすぎた……。」
カプナート「……ふん。」
カプナート「おい、エルピスかテオ。メルクでも構わない。誰かこいつの手を握ってやれ。メソメソされても鬱陶しい。」
カプナート「……オイ、返事は。集団行動なら基本だぞ。」
カプナート「……オイ!」
ヘキサルト「リーダー!」
カプナート「お前は呼んでない……!」
ヘキサルト「違う、そうじゃなくて!」
ヘキサルト「後ろ、誰もついてきてない……!ピラオロスもいなくなってる!」
カプナート「なに……!」
カプナート「……っ、霧が濃くなっている。はぐれたか。」
ヘキサルト「鈴で連絡取ってみる!まだ、そこまで離れてないはず……!」
カプナート「ああ……。」
カプナート(何をしているんだ、僕は……。この濃霧なら一番気をつけるべきだったろう!)
カプナート(この霧じゃ、探しにいっても合流できる可能性は低いな。クソッ、こんな濃い霧は生まれてはじめて……)
カプナート「……いや、前に一度だけある。あれは確か、セントギアの美術館で……、」
「ピリリリリリ!」
カプナート「……!警吏の使う笛!」
ヘキサルト【エルピス、エルピス……!】
【……ぱい】
ヘキサルト「あ、よかった!返事がある!」
カプナート「どこにいるか聞け!警吏が動いてる、何か妙だ!」
ヘキサルト「わ、わかった!」
ヘキサルト【エルピス、今どこにいる?私達で迎えに行くから】
【……メ、来ちゃ。こっちは……ぶない!】
ヘキサルト【エルピス?】
【にげて!】
ヘキサルト「……!」
ヘキサルト「リーダー、様子が……!」
「シュゥゥゥゥ……!」
カプナート「この、鳴き声は……!」
「シュルルゥウウウ!」
ヘキサルト「リーダー!後ろだ!」

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